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【書評】『藤原氏 権力中枢の一族』真の日本史の主人公

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身近にたくさんいる○藤さん

あなたの身近に佐藤さん、加藤さん、伊藤さんなど、藤がつく名字をもった人はいないだろうか。

10万種類を超えるほど豊富にある日本の名字なのに、「藤」をよく見かけるのは不思議に思える。

これは気のせいなのだろうか。

世の中には面白い調査があり、全国名字ランキングなんてものがある。

全国名字ランキング

明治安田生命が調べたもので、堂々の一位は「佐藤」だ。

他にもみていくとやはり「藤」がつく名字が目立つ。

身近に「藤」の名字の人が多く感じていたのは気のせいではなかったのだ。

それにしても、「藤」の名字がこんなに多いのはなぜだろうか。

藤原氏が関係している

この世をばわが世とぞ思ふ望月(もちづき)の欠けたることもなしと思へば

三人の娘を天皇の后にして栄華を極めた藤原道長をはじめ、権力の中枢に居続けた「藤原氏」が関係している。

「藤」が付く人はその「藤原氏」の末裔の可能性があるという。

権力の要職を歴任した藤原氏の恩恵を得るために、自分の職業や領地に「藤」の字を組み合わせて名字をつくった。

地名×「藤」でいえば、伊勢平氏でもおなじみな伊勢に領地をもっていた人物は「伊勢」×「藤原」で「伊藤」を名乗るようになる。

現代にもその影響を残す最強一族藤原氏。著者も冒頭でこのように述べている。

藤原氏こそ、日本の歴史を動かしてきた主役である。

そんな藤原氏の始まりからいかに権力をつかみ、後世まで残していったかを描いたのが本書だ。

著者は歴史好きならお馴染みの倉本先生。

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藤原氏を知れば日本史がわかる

ヨーロッパ史を語る上でこんな名言がある。

キリスト教が心なら、ハプスブルク家は背骨である。

各国の王族と血縁関係を結び、ヨーロッパで絶対権力を握ったハプスブルク家はヨーロッパ版藤原氏といってもいいだろう。

藤原氏も娘を天皇の后にして生まれた子の外戚となることで権力を握っていった。

藤原氏を知ることで日本という国家の権力や政治、社会や文化の構造を解明するヒントになるのではないか。そう著者は推察する。

本書の構成

序章では、藤原氏の祖、中臣鎌足から筆は始まる。

中臣鎌足の活躍もあり、藤原氏が成立した後、藤原氏を確立させたのが、藤原不比等である。

古代史のグランドデザインを描いたのは藤原不比等と持統天皇であり、キーパーソン藤原不比等の思惑を探っていくのが第一章。

第二章では奈良の政変を描き、藤原諸家の動きを南家の奈良麻呂を主人公にみていく。

第三章では薬子の変をきっかけに藤原北家の時代がやってくる。藤原氏の権力掌握の代名詞でもある摂関政治の始まりを良房、基経を通して読み進める。

第四章ではスーパースター藤原道長が登場。絶頂期の藤原氏の政治・経済・文化の功績を追っていく。

第五章では摂関家の成立と院政をテーマに藤原氏を外戚にもたない後三条天皇からはじまる中世にどう対応したのかたどっていく。

第六章ではついに藤原氏は近衛・九条・鷹司・一条・二条の五摂家へ分立していきいかに生き残ったのか様相を解説する。

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藤原家=準皇族?

藤原氏は、天皇家と婚姻関係を結ぶことによってミウチ的結合を高め、準皇族化していった。

この戦略は蘇我氏と全く同じで、蘇我氏のやり方を藤原氏がパクったとも言える。

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その結果、律令に縛られない立場で王家と結びついて干渉できるポジションに立つことができた。

また持統天皇は、皇位継承権をもった皇族を権力の中枢に置くことを危険視した。

自分の血筋を繁栄させたい持統天皇はしだいに皇族を権力中枢から追い出し、代わりに皇位継承権のない藤原氏を重宝するようになったのだ。

こうして藤原氏は皇族というライバルを倒し、臣下としては最高位を占めるようになっていく。

そして聖武天皇以降、ついには藤原氏の血をもった天皇も現れるようになり、王権を補助するだけなく主人公へと躍り出たのだった。

さいごに

本書では藤原氏の家系図がこれでもかってくらい豊富に紹介されている。

特に北家・南家・式家・京家の家系図は大変参考になる。

思えば現代も藤原氏の影響を多大に受けていることがわかる。

BUMPOFCHICKENのボーカルもOfficial髭男dismのボーカルもどちらも「藤原」さんだ。

平安時代は和歌を読んだ藤原氏が、現代ではバンドで音楽を歌う。

 

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おくでぃ

▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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