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【書評】『ユニクロ潜入一年』まるでスパイ?ユニクロ帝国への潜入記録

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"国民服" ユニクロ

洋服に興味がない人もある人も一度は着たことのあるのがユニクロ。私のようにこだわりがない人にとっては、とりあえずユニクロ着ておけば赤点にならないという安心感とそこそこの値段が魅力的だ。気がつけば着ている洋服ほとんどユニクロ。

なんてこともありうるユニクロはもはや国民服といっても過言ではないだろう。昔の国民服はカーキ色しか選べなかったが、現代の"国民服"はカラーバリエーションに富んでいる。

そんなユニクロは「ブラック企業」という好ましくない印象も同時に持っている。ユニクロの躍進は人件費に対する吝嗇さにある。そのような闇を暴いた『ユニクロ帝国』の著者がユニクロに潜入調査した記録が本書だ。面白くないわけがない。

柳井社長からの煽り

著者は前著『ユニクロ帝国』でユニクロ側から名誉毀損で訴訟されている。裁判の結果はユニクロ側の上告を棄却し終わったが、著者からの質問には一切答えることがなくなった柳井社長。記事に嘘偽りはなく、納得のいかない著者はある日、雑誌のインタビュー記事での柳井社長のある発言に目が止まった。

 「我々は『ブラック企業』ではないと思っています(中略)『限りなくホワイトに近いグレー企業』ではないでしょうか」と答えたのち、「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほどんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」

これだ!この文章を柳井社長からの招待状だと思った著者は、お言葉に甘えて、ユニクロのアルバイトとして潜入を決意する。潜入調査に対する準備段階から著者の熱がすごい。

バレるとまずいので妻と一回離婚して、再度結婚して妻の名字を名乗る。ここまでしてもバレる不安を抱えつつ緊張の面接へと向かうところから本書は始まる。

痛恨のミス!

身バレしないか不安だった面接は、万年人手不足だったことが幸いし問題なく合格。ここから著者は「田中」という偽名を使い、アルバイトとして内部調査を行う。

ここからは著者目線での現場の感想が語られるのだが、何度も凡ミスで身バレしそうになる。同僚に何度も「田中さん」と呼ばれても自分のことと気が付かない。

そりゃそうだ。本名は違うのだがら反射的に反応するのは難しい。また疲れすぎてマジックでサインする際に、うっかり本名を書いてしまったりと読んでいる読者がハラハラしてしまう展開が何度も訪れる。

 

内部から見えるユニクロの闇

実際に内部で働いてみると見えてくるものがある。ユニクロの主要労働供給源は主婦と学生だ。

土日やセールのときは希望以上のシフトに入れられて、閑散期は希望以下のシフトに調整される。ジャスト・イン・タイムを真似たのか、労働者側の都合は一切きかず、まるで資源を調達するかのごとくシフトが決められるのだ。

しかも恐ろしいことにシフトを休み際には「理由」の記載を求められる。全員経営をモットーとしているユニクロではアルバイトでもプロ意識を求められるのだ。

 

柳井イズムに染まる

柳井社長の言葉を追い続けた著者は、偏屈屋のように反発してきたが、不思議なことに働いているうちに、柳井社長の言葉を実践している自分に気が付く。

知的労働者たれという、柳井社長お気に入りの言葉があるが、著者がレジを効率よく回すための改善案を挙げ、成果が出たときには喜びを感じたという。敵同士がたまに通じる場面があり、そこも魅力のひとつなっている。

ユニクロでは些細なことにも顔を出してくる柳井氏に対しての著者の一言がいちいち面白い。それはぜひ読んで楽しんでみてほしい。そして文庫本だけの特別編として株主総会での直接対決が追加されている。一切会ってくれない柳井社長と著者がついに邂逅する様子は必見。

 

まとめ

本書は柳井商店(ユニクロ)のカリスマ柳井社長の真の姿に迫る一冊にもなっている。私も就活でみたことあるが、気難そうなおじさんという印象だった。インタビュー記事などで美化されたカリスマとしての像をぶち壊してくれる。

また、ユニクロが抱える問題点を現場視点、経営者視点で挙げられており、帯にあるように「ユニクロ愛用者必読の危険本」のキャッチコピーはまさにそのとおりだと思った。

ウイグル問題も未解決のまま、世界からも注目されているUNIQLO。

これ読んだら、もう以前とおなじ目線でユニクロには買い物にいけない。

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おくでぃ

▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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