半年に一回の祭典
読書垢には、半年に一回とある楽しみがやってくる。
それは、本好きが半年間で面白かった本を10冊紹介するというもの。
多読・乱読の末に、厳選された10冊なので、どれも間違いない作品ばかり。
私の選定ポイント
私の選定ポイントは「印象に強く残ったか否か」
読了後に、何か残る毒のような本こそ名著だと私は思っています。
人生のふと瞬間に、その本の内容がバッと思い起こされるような本と出会いものですね。
ではさっそく、簡単に紹介していきます!
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#2022年上半期の本ベスト約10冊
『動物農場』
スターリンによるソ連乗っ取りの過程をデフォルメされた動物たちを通して描かれた傑作。
ソ連史を知ってから読むとさらに楽しい。「口は災いの元」「沈黙は金」という言葉がこれほど身にしみる作品があるだろうか。
おかしなことはおかしいと言える世の中でなければ、『動物農場』のような狭い世界に閉じ込められてしまうだろう。
『道徳感情論』
「人間とは何か」を理解する上で外せない名著。
人間関係の枠の中で生きるしかない人間は、他者との架け橋として「共感」なる作用がある。
当事者の感情をそっくりそのまま他者が同じ粒度で感じる事はできない。
だからこそ他者は冷静に判断することが当事者以上にできる。
観察者の視線があるからこそ、人々は道徳的にふるまうことを意識する。
『カタロニア讃歌』
『1984』のジョージ・オーウェルがスペイン内戦に義勇軍として参加した際のルポルタージュ。
「戦争」とは内から見るのと、外から見るのとでは全く異なるモノで、ジョージ・オーウェルが描く戦争は、
我々が想像する姿とは異なるのがとても面白い。
戦争で一番つらいのは何か。それは生活ができなくなることにある。
戦争下の中でいかに生活を取り戻すかをユーモア交えつつ語ってくれて終始面白かった。
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『ミシェル 城館の人』
誰もがきいたことはあるが、読破した人は数少ない『エセー』の著者モンテーニュの生涯を描いた長編小説。
日本の鴨長明とも並び評されるモンテーニュが生きているかのように活き活きと描かれており、
同じ時代にタイムスリップしたかのような感覚が味わえる。
モンテーニュの人生を一緒に辿ることで、彼のどの経験が『エセー』のどの箇所に刻み込まれたかを、
知ることができ、『エセー』に挑む前の大きな助けとなりそうだ。
『語りえぬものを語る』
「人生を変える一冊」。
よくそういった大げさな売り文句があるが、嘘偽りなく、この本は読了後、あなたがみる世界を変えてくれるだろう。
我々は習慣によって起こり得ないわけではないが、起こりうる可能性の低い出来事を無視して生きている。
もしもすべてを意識して生きるならば、毎日、隕石が降ってこないか心配しながら生きなければならないが、
そんな世界はしんどすぎるだろう。
人間が無意識に捨てている世界を拾い、語り得ぬ世界が如何に言葉として捉えられるかの変遷を辿ることができる。
本書では、哲学者がみている視点を追体験できるのが魅力の一つ。
『オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家』
冷戦が終わり、自由民主主義が席巻し平和が来ると思いきや、民族問題がたちまち現れてくる。
一民族一国家の国民国家がいかに生まれるのか、帝国から国民国家への変容を知る上で、
オスマン帝国は最良のケーススタディになる。
国民国家の限界を感じる現代において、オスマン帝国を振り返ることは非常に有意義なことであろう。
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『人間の義務について』
イタリア統一運動の思想面を一手に担った、日本で例えると、吉田松陰とも評されるマッツィーニによる思想書。
権利ばかりを求めた結果、あなた方の求めた生活の改善は図られただろうか?
権利を求めると奴隷になる。そんな不思議なメカニズムを解明し、そこから脱却するための鍵として、
権利 < 義務 そして教育を唱える。
21世紀の今、読んでも、現代のことを言い当てているかのような内容かつ、
マッツィーニの語りかける口調が目線をあわせてくれていて心に響く。
『タイタス・アンドロニカス』
シェイクスピア史上、最も残酷な物語。とにかく人が死にまくり、復讐の連鎖が止まらない。
ローマの将軍に兄弟を殺された遺族が、その将軍の娘の舌と両手を切り落とし、
ある秘密を伝えられないようにする描写がなんとも残酷で読むのがしんどくなる。
月並みな表現になるが、「衝撃作」というものだろうか。
『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
本を読んでいるといろんな考えを知れるのでややリベラルに寄るような気がする。
保守主義をみると、時代遅れの考えにいつまでしがみついてるんだろうか。と思わなくもないものだが、
右のメリット、左のデメリットをバランスよく捉えられるようになったと思う。
基本、右側が有利なのは間違いなくて、帯にもあるようにリベラルが勝てないわけがわかった。
考え方の違う者同士が仲良くやっていくしかない今の世界でヒント満載とも言える作品。
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『イギリスにおける労働者階級の状態』
『資本論』の著者マルクスの盟友にしてパトロンのエンゲルスが労働者の生活状況についてまとめた報告書。
産業革命が起こり、そのデメリットがくっきりしてきた時代の庶民の生活が垣間見える作品で普通に読み物としても面白い。
古代奴隷制の頃よりも悪化している隠れた奴隷制とも呼べる賃金労働者の問題はまだ終わってはいない。
個人が起こした殺人は犯罪になるが、社会が起こす犯罪は罪に問われないのか。そんな疑問をエンゲルスは投げかけてくれる。
さいごに
岩波に偏りましたが、上半期もいい本と巡り会えました。残り半年も脳に強い印象与えてくれるいい読書体験できることを期待しています。