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【書評】『平清盛の闘い』幻の中世国家

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おくでぃ

お久しぶりです!おくでぃです。今宵は悪人像として描かれがちな清盛の新しい姿を紹介します!

出世の神様?

出世の神様として有名なのは豊臣秀吉でしょう。

一介の農民に過ぎなかった彼が権力の頂点まで上り詰めた様子は下剋上の時代を代表する大出世でした。

戦国時代が人気な時代ということもあり、豊臣秀吉は今も人気です。

一方、急速に出世した人物として平清盛がいます。

武士でありながら太政大臣にまで上り詰めた彼ですが、豊臣秀吉と違って尊敬されたりする人物というよりは、悪逆非道の印象が残っていたりします。

源氏による鎌倉幕府成立の歴史を知っている後世の人からすると、平清盛は悪の親分であり、また『平家物語』という古典によって、悪人像はますます固まってしまいました。

しかし、豊臣秀吉も平清盛もともに西国を基盤とし、一代限りで急速に出世し、息子の代には没落する点は同じです。

王権への挑戦

本書では平清盛をただの悪人像として描くのではなく、織田信長にも優る開明性をもったリーダーとして描きます。

単に源氏と戦ってイメージですが、それに限らず、古代天皇制や仏教勢力と闘い、日宋貿易を推進し、土地をベースとする封建制を越える貨幣経済の導入を図ったり革新的な面もたくさんもちます。

保元の乱では左大臣の藤原頼長が武士を率いて合戦に臨んでいました。貴族が武士化する。そんな未来もあったのです。

保元の乱の次の平治の乱の勝利者は平清盛でした。

彼は貴族政権の頂点に経ちながら、平家の武士団をもまとめあげる稀有な存在へとなります。

しかし、平家の滅亡をもって、貴族政権と武士政権は再びわかれてしまいます。

室町幕府の足利義満は公武合体として武士と貴族の政権を合わせようとしましたが、本来、貴族政権と武家政権は一体化する流れもありました。

もしも平家の時代が続いていれば。。。

公武分裂の鎌倉時代ではなく、公武合体の平家時代が続いたのかもしれません。

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清盛の生涯を三部作で!

本書では清盛の生涯を三部作にわけて追ってみていきます。

  1. 生誕から台頭のきっかけとなる平治の乱までの40年間
  2. 後白河との決別からのクーデター(治承三年の政変)まで
  3. 権力の絶頂から死去まで

清盛最大の失敗

以仁王の挙兵をきっかけに反平氏の反乱が勃発しました。中でも源頼朝が盟主として平家を滅ぼす闘いを指揮していたのは有名な話でしょう。

まさかあの頼朝がこんなになるなんて。。。清盛含め誰もが思いもしなかったことでしょう。

実は清盛は頼朝を殺そうとしていて、殺すチャンスがありました。

当時、平治の乱が起き、敵方の義朝は殺され、その息子である頼朝も捕まり、清盛の前に引っ張り出されました。

武士にだけしか適用していなかった死刑が、公卿にも適用されるようになったのが保元の乱。

幼いとはいえ武士の頼朝が助かる見込みは本来ありませんでした。

少年とはいえ戦闘員。当然仇討ちの危険もあります。処刑をしてもなんらおかしなことはない。

清盛も禍根を残さないためにも頼朝を殺そうとしましたが、そこに待った!をかけた人物がいました。

それは清盛の継母である池禅尼です。

彼女は頼朝を殺すのは勘弁してほしい。そういうと、清盛は処刑を取りやめ、伊豆へ流すことで終えました。

これは、清盛最大の失敗になるのですが、継母のお願いを最高権力者である清盛が言うこと聞くのも変ですよね?

理由があって、池禅尼の発言力は想像以上に強かったのです。

北条政子が頼朝なき後も強い発言力をもっていたように、家長亡き後の妻は強い力を持ちました。

父の継母の発言なので、息子の清盛も聞かざるを得ないのです。

また池禅尼の母は院近臣家の出身で、裏では後白河の働きかけがあったともいいます。

後白河からしたら若い近臣をフォローしてあげたに過ぎませんでしたが、その助けた頼朝によって、平家は滅ぼされるので、

何がどう転ぶかは全く読めません。

まさか二〇年後に平家を滅ぼすなんて当たるわけがない。

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さいごに

福原遷都の背景であったり、義朝よりも清盛が出世できた理由など、日本史好きには気になる疑問が次々と腹落ちするので非常に楽しい一冊になっています。

正統性が薄い場合には武力で取り繕う。

最大の兵力をそなえた平家には武力という伝家の宝刀があり、それを駆使して王権への挑戦を図る清盛の姿にありえたかもしれない別の未来を見ることができます。

 

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▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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