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【書評】『地図と読む 現代語訳 信長公記』側近が描く信長の本当の姿

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英雄、筆を好む

歴史とは誰かが文字にして記述することで残る。

自分の生まれる前の出来事を知ることができるのも、誰かが残してくれたおかげなのだ。

古来より英雄と呼ばれる人たちがいる。

たとえば、共和政ローマを帝政へと導いたカエサルは自身で『ガリア戦記』を残してくれたおかげで、カエサルがどんな人物なのか後世の人々に教えてくれている。

そうした史料を一次史料と呼ぶ。

一次史料とは、その時代を生きた当事者が残した文書のことを指す。

本書の『信長公記』は、織田信長の近くで仕えた家臣の大田牛一が、間近にみてきた主君、織田信長の生涯を淡々と記述した歴史書だ。

実際に織田信長をみた人が書いているので、歴史書としても有名で、これまでもたくさんの本が世に出ているが、本書はまた一味違う。

ちなみに太田牛一は、1613年まで生きており、信長、秀吉、家康と天下人のリレーをみてきた生き証人のような人であった。

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現代に蘇る信長の軌跡

まずひとつは、地図がちょくちょく出てきて地理感覚を得やすい点にある。

歴史を学ぶ際にコツが一つあり、それは地理も合わせて理解することだ。

地理は古来より変わらない。昔から要所と呼ばれる箇所はいまも要所だし、豊かな土地は変わらず豊かな場合が多い。

本書では城と地理を都度表示してくれるので大いに読者を助けてくれる。サイズも文庫ではなくA5版と大きいのも嬉しい。

ふたつめは、現代語訳で書かれていることだ。日本の古典の授業が苦手な人は多かったのではないだろうか。

ほんとうに同じ日本人が書いたの???って思うくらい、現代人が古典をそのまま読むのはしんどい。

タイムイズマネーの世界で生きている、You Tubeの5秒広告すらイライラして待てない現代人には古典をそのまま読む余裕はない。

だが安心してほしい。

本書では、すべて現代語訳で書いてくれている。読み手を迷子にさせることはない。ただし、登場人物がエグいほど多いのはご愛嬌を笑

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織田信長の濃い生涯

尾張の国での家督争いから本能寺の変で露と消えるまでの49年間の濃い人生が描かれている。

明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康らお馴染みの人物もたくさん登場してきて、ちょっとテンション上がる。

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戦国時代なので仕方ない部分もあるが、織田信長はとにかくよく裏切られる。

家老にも、義弟にも、そして極めつけは明智光秀に裏切られ命を落とす。

そんな信長の生涯は、49年間とは思えないくらい忙しく濃い時間を過ごしている。

そんな濃い時間を彼に与えてくれたのは、3つの幸運(他者の死)があったからだと思う。

  1. 斎藤龍興の死
  2. 武田信玄の死
  3. 上杉謙信の死

織田信長にとって強敵かつしんどい時期に戦になった3名の病死が信長を救った。

信長視点に立つと、ほんとうにいいタイミングで亡くなっている。

運も実力の内ということで、織田信長は上洛し、天下人として、方面軍を組織し、西へ伸長していく。

西攻めの主力である秀吉はよく愛されていたのだなあと思う記述があったり、細かな機微もわかるのが本書の魅力でもある。

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さいごに

織田信長は日本史ランキングでも常に1位に名を連ねる英雄だ。

そんな織田信長の身近にいた人物が描いた歴史書が面白くないはずがない。

織田信長は意外にも相撲や競馬が好きで、信長や周囲の人物の人柄や趣味までわかるエピソード盛りだくさん。

帯にもあるが、「側近が描く信長の本当の姿」を知れる貴重な本だ。

さいごにびっくりしたのだが、『信長公記』は「のぶながこうき」ではなく「しんちょうこうき」と呼ぶ。

絶対、「のぶながこうき」って読むだろ・・・

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おくでぃ

▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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