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【書評】『ペール・ギュント』自己中心男が最後に気付いたものとは?

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M-1グランプリをみて思い出した一冊

お笑いは大好きだが、これまでM-1グランプリをちゃんと見たことがなかった。

テレビがないので見るのにハードルがあったのだが、有能な公式チャンネルのおかげで、テレビのない我が家でもM-1グランプリを楽しむことができた。

特に面白かったコンビがロングコートダディ。

ロングコートダディ

彼らのネタは「来世」を取り扱ったもので、「ワニ」になりたい男が、どうしても邪魔されて「肉うどん」やら「ワゴンR」になってしまうとんでも設定が素晴らしい。

そんな彼らのネタを見ていて、ふと思い出したのが、イプセンの『ペール・ギュント』

クライマックスシーンでボタン職人によって「ボタン」にされてしまいそうになる主人公の姿が何故か重なったのだ。

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ワールドイズマインな主人公

本書を簡単に説明すると夢見がちのホラ吹きが、富・名声・力を手に入れるために世界中を旅して故郷に帰ってくるお話。

とある農村に母親と二人暮しのペール・ギュント。彼は、

王さまになる、皇帝になる!

と身の丈にあっていないことばかり言うので、母親も頭を悩ませていた。

だが、母親からは愛されていて、またモテる男でもあった。

かつての自分を好いていた村の娘の結婚式に乱入し花嫁を連れ去ったり、

連れ去ったと思ったらあっさり捨てたりと身勝手な男の道をガンガン突き進む。

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一発当てて大金持ち!

女に飽きたら次は金だ。山師のような仕事で一発当てたペール・ギュントは、本当にお金持ちになってしまう。

金があるところに人は群がるのは昔も同じ。

中年の紳士となっていたペール・ギュントは、その成功の秘訣を聞かれてこんな名言を残している。

理由はすべてわが輩が独身だということ。諸君、事は明々白々、男子なんたるべきか、おのれ自ら。これがわが輩の単純なる答え。

人間は、おのれを可愛がらねばならない。それが出来るかね、いったい、駱駝みたいに瘤つきの上に、まだなにかを背負わされていては?

自己中心的なやりたい放題の男だが、節々に心に刺さる言葉が口からでるところも本書の魅力の一つ。

こち亀の両さんのような気もする。

ちなみに無一文になるところも両さんっぽい

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さいごに

エーリックフロムの『生きるということ』では、人生の様式に「持つこと」と「あること」を挙げており、「持つこと」代表にペール・ギュントの名前を出している。

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まさにペール・ギュントは、女・金・権力など「持つこと」の世界で評価されるモノを欲しがり、実際に手にした。

「人間は、おのれを可愛がらねばならない」

そんな言葉を残したペール・ギュントが最後に問われたことは「おのれ自らとはなにか」という問い。

「自分とはなにか」に悩むことが多い現代人にとって、誰もがペール・ギュントなる人物像の一面を秘めており、だからこそ共感できる点はできて面白いのだ。

グリークの組曲もあるので、音楽と劇詩を、耳と目で楽しめるエンターテイメントがここにある。

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おくでぃ

▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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