原題は「Much Ado About Nothing」で「なんでもないことで大騒ぎする」という意味から、邦訳では「から騒ぎ」となる。
本作は、ロミオとジュリエットやオセローのような要素も盛り込みつつも、悲劇ではなく喜劇として終えているところが特徴。
喜劇で終わることで「から騒ぎ」だったということに気が付かせてくれるのだ。
大騒ぎに巻き込まれる&起こしているのは2組のカップルであり、このカップルを中心軸に周囲の人々がついた嘘から物語は動き出す。
登場人物は主に以下の通り
- ドン・ペドロ(領主)
- レオナート(ヒロインたちのパパ)
- ヒアロー(悲劇のヒロイン)
- ビアトリス(ヒロイン)
- クローディオ(主人公①)
- ベネディック(主人公②)
- ドン・ジョン(ペドロの弟)
- ボラキオ(ドン・ジョンの家来)
舞台はイタリア・メッシーナ。
戦に勝った領主のドン・ペドロはメッシーナへ凱旋し、それを歓迎するのがメッシーナ知事のレオナート。
ドン・ペドロは友人のクローディオが、レオナートの娘ヒアローに恋したことを知り、その恋を応援するために一肌脱ぐことを提案する。
仮面を被り、クローディオになりすましたドン・ペドロがヒアローに告白するというものだ。
まさかの告白代行。そこアウトソーシングしちゃっていいのか・・・と思いつつも見事に二人を婚約させることに成功。
こうしてクローディオとヒアローのカップルが誕生した。めでたしめでたし。と終わるはずがない。
クローディオとヒアローのカップル以上に、サブながらも主役級のインパクトを残すのが、ベネディックとベアトリスのカップルだ。
ベネディックは独身至上主義者で絶対に結婚なんて勘弁!独身至上主義者にふさわしいこんなセリフを言い残している。
女房に裏切られて、知らぬは亭主ばかりなりなんて馬鹿にされるのはごめんですね。一人の女性を疑って女性全体を不当に扱いたくない。だから、女なんて一人も信じないほうが身のためです。要するに結婚しないほうが結構。この身のためだし、身だしなみに金もかけられる。俺は生涯、独身を貫きます。
一方、ベアトリスは、レオナートの弟の娘で、ヒアローと瓜二つの美貌を持つが、大の男嫌い。
男に愛してますねんて言われるより、飼い犬がカラスに吠え立てるのを聞いてたほうがましだもの。
ツンケンしているベアトリスと、ベネディックが相まみえるといつも口喧嘩が起こる。
そんな二人の舌戦も本書の魅力の一つでタイトル「から騒ぎ」の一環でもあるのだ。
旗から見ていたおせっかい役のドン・ペドロは、ベネディックとベアトリスをくっつけようとある計画を実行する。
その際についた「良い嘘」と外野が持ち込んだ「悪い嘘」が入り混じり、物語があらぬ方向に進んでいく展開が読者をひきつけてくれる。
本書は、人間は勘違いする生き物であり、現実を正しく認識することの難しさを教えてくれる。
所詮は自分勝手な認識でつくった世界の中で生きているのだ。
結婚しないぞ!と言っていた友人ほど早く結婚している気がするが、その謎が解けたような気がする。