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【書評】『ビゴーが見た日本人』諷刺画に描かれた明治

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おくでぃ

お久しぶりです!おくでぃです。今日は誰もが一度は見たことがある風刺画を描いたビゴーについて紹介します。

誰もが一度は目にしたことがある風刺画

まずはこちらの絵を御覧ください。

漁夫の利

ノルマントン号事件

おそらく教科書で見た記憶はあるんじゃないでしょうか。

最初の絵は、日本と中国が韓国という魚を釣ろうと争っており、漁夫の利を狙っているロシアが真ん中にいる風刺画です。

2つ目の絵は、ノルマントン号が和歌山県沖で難破して、船長以下の英国人船員は避難し、日本人乗客25名が全員死亡した事件を描いたものです。

ともに一度みたら忘れられないインパクトのある絵ですが、彼は別に政治問題だけを描いていた画家ではありません。

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フランスからやってきた日本好きな少年

フランスからやってきたビゴーはレオン・ジェロームから絵の基礎を学んだ凄い画家でした。

ちなみにレオン・ジェロームは山本芳翠や藤島武二の絵の師匠です。

フランスにいても十分名をあげる実力をもっていた彼でしたが、彼の視線はフランスではなく極東の島国に注がれていました。

当時はヨーロッパ絵画界では浮世絵が大きな影響を与えていました。

こうしたジャポニズムの影響を受けたビゴーはいつしか日本へ行くことを夢見て、ついに実行することにしたのです。

マルセイユから香港経由で横浜へ到着。明治一四年のことでした。

しかし、彼の期待は到着後すぐに崩れ去ります。

明治は一四年も過ぎ、彼の憧れた浮世絵版画の文化を既に消滅していたのです。。。

ただ、彼の目はあることに気がつきました。

たしかに夢見ていた浮世絵に描かれた世界は一見消えたように見える。

しかし、庶民の生活にはまだ文明開化する以前の世界が残っていたのです!

彼の芸術や力量を発揮する舞台が見えた瞬間です。

ここから彼は日本の政治だけでなく庶民の生活を描くようになっていきました。

それらの絵は明治日本の生活をいまに伝える大変貴重な資料となっています。

在日外国人として

洋画で飯を食っていくのはいまもむかしも変わらず大変です。

外国人画家が日本人に教えるような場所は工部美術学校か陸軍士官学校くらいしかありませんでした。

やっと手に入れた陸軍士官学校の教師も二年契約だけ。

なんとか生活費を稼ぐために庶民の生活を描いたスケッチを売ったりしていました。

それが案外、在日外国人にウケてやっていけるような収入を得られるようになりました。

しかし、それもつかの間、日本政府の条約改正交渉によって、外国人居留区の特権が失われつつありました。

お客さんが在日外国人だということもあり、ビゴーも条約改正には反対の立場。

在日外国人の憂さ晴らしも兼ねて、日本政府の野蛮さについて指摘した風刺画を書くようになりました。

ここから風刺画家ビゴーが誕生したのです。

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さいごに

本書では、著者の略歴を紹介した後は、彼が日本人とともに過ごし、その生活を在日外国人という立場から切り取った絵が二ページごとに紹介されています。

どの絵をみても明治期の日本人の生活が目の前で蘇ってくるかのようで、読んでいて非常に楽しい一冊です。

ビゴーのような凄腕の画家がたまたま日本にやってきて、途中で帰らずに、激動の時代をたくさんのスケッチで描いて残してくれている。

このことは日本にとってとってもラッキーだったと思います。

そんな彼がみた明治期の日本の生活に触れてみてはいかがでしょうか。

 

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▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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