こういう本を待っていた!
書店に足を運ぶと仏教関連の本は山ほど置いてある。
仏教の故郷はインドで、ガウタマ・シッダールタ(ブッダ)によってはじめられたことは誰もが知っていることだろう。
実際に、仏教関連の本を読むと必ずブッダは触れられる。が、もう飽きたのだ。
どちらかというと日本国内で仏教がどう進展していったのかが知りたい。
そんな私の声にこたえてくれたのが本書だ。
今でこそ多くの日本人は「仏教」に違和感を感じることは少ない。
親しい人が亡くなるとお寺で葬式をあげたりする文化は今も健在だ。
しかし、そんな「仏教」はすんなりと「日本」に浸透したわけではない。
「仏教」と「日本」の微妙な関係性やせめぎあいを描いた本書は、日本における仏教受容の歴史を知りたい読者を満足させてくれるだろう。
おかしな宗教
仏教というのは不思議な宗教である。いや宗教ではないのかもしれない。
仏教の故郷、インドでは仏教は滅び消えかかっている。中国や韓国でも一時期と比べるとはるかに影響力を落としている。
日本も未だに寺院はたくさん現存するも、織田信長の焼き討ちや廃仏毀釈運動を経て、思想の主流をはることはできなくなった。
チベットや東南アジアなど、今も仏教が定着し愛されている地域もあるが、どうも定着しにくい「空」のような一面があるのではないかと著者は指摘する。
そんな定着しにくい仏教がいかに日本に受容され、変容し、今の姿になったのだろうか。
その起源は古代史のカリスマ聖徳太子から始まる。
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太子伝説
聖徳太子は最近の教科書では厩戸皇子と記載されているらしい。
これまで彼の功績とされてきたことは、彼ひとりの成果ではなかったり、時代も異なっていたと研究成果が出てきていて、カリスマ像があやうくなっている。
そんな彼はある人物の生まれ変わりなんじゃないか?そんな伝説がある。
その人物とは天台宗を開いた智顗の師匠である慧思だ。
太子の生まれたことには、慧思は生きていたので生まれ変わりという説には疑問がつきまとうが、伝説でも皆が信じれば真実になるのが歴史である。
また太子の命令で小野妹子を(自分が)慧思だった時代に使っていた『法華経』を取りに行かせた。なんて逸話も残っている。
天台宗の開祖、最澄は、慧思の弟子である智顗の生まれ変わりだと言われていた。
国内の天台宗の勢いも増し、こうして聖徳太子は仏教界においてもカリスマ性をもち、崇拝・信仰されるようになったのである。
名僧の登竜門 比叡山延暦寺
最澄の開創した比叡山延暦寺は平安仏教の華であった。
法華経はもちろんのこと、禅も密教も念仏も取り扱っており、仏教に関することを何でも学べる総合大学のような存在となっていた。
延暦寺はその卒業生がすごい!
- 円仁
- 円珍
- 法然(浄土宗開祖)
- 親鸞(浄土真宗開祖)
- 栄西(臨済宗開祖)
- 道元(曹洞宗開祖)
- 日蓮(日蓮宗開祖)
などなど、スーパースター揃いで、平安の堀越学園だと言える。別名「日本仏教の母山」
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さいごに
聖徳太子からはじまり、2人の天才、最澄と空海のエピソードや、鎌倉新仏教などお馴染みのメンツはもちろんのこと、「末法思想」「本覚思想」「神仏習合」など、知っておきたい重要知識も学べる良書だ。
令和二年でなんと二六刷もされているのも信頼できるだろう。
我々、日本人の思想の核には仏教的な要素が染み込んでおり、それらを少しずつ知ることができる。
この島国で暮らすならば、空気のようにどこでも感じる仏教の跡を巡る旅を提供してくれる。そんな一冊である。