政治 書評

【書評】『政界再編』離合集散の30年から何を学ぶか

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おくでぃ

お久しぶりです!おくでぃです。今回は日本政治の政党の動きがわかるようになる本を紹介します!

一強多弱の政党時代

「自民党は嫌いだけど他に選択肢がない」

そんな声をよく聞きます。

自民党一強に対して多数の弱小政党がうごめいている状態の今、致し方ないのかもしれません。

ではなぜこのような状況になったのでしょうか。

2000年代後半には、政治学者が理想とするような二大政党制がついに日本でも運用できたかと期待された民主党政権もわずか数年で崩壊。

なぜ政権交代ができたのでしょうか。

もっと遡ると、自民党が38年間もの長期にわたって政権を維持しつづけました。

きちんとした選挙を通じて、38年間も与党が代わらないのは世界をみてもまれなケースです。

では、なぜ自民党は長期政権を続けられたのでしょうか。

戦後日本政治における政党の離合集散の動きに着目し、その力学を把握できるのが本書の特徴となっています。

政治に興味ある人もない人も

不変と思われた自民党の55年体制が崩壊し、「政権交代ができる」と確信できた小選挙区制導入の選挙政治改革から本書は始まります。

これからの日本政治がどうなるのか自分でも推察してみたい方には、きっと助けになるような一冊と思います。

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55年体制

保守代表の自民党と革新代表の社会党が対峙する体制をその起源から55年体制と呼びます。

安保闘争の際には政権交代の期待も高まりましたが、自民党は時代に応じて右から左まで守備範囲を広げて、包括的に利益を代弁して支持を広げていきました。

一方の社会党は党内対立が起きて、右と左で離散。こうして自民党を脅かす規模の野党はいなくなり、自民党の天下がやってきました。

「自民党以外に選択肢がない」なんて状況は別に今に始まったわけではありません。

冷戦という比較的わかりやすい国際状況に、人口ボーナスや戦争特需による高度経済成長の追い風もあり、自民党は春を謳歌しました。

ロッキード事件

外敵を追い払ったら次は身内で争うのは人間組織の宿命でありお約束のパターン。自民党でも分裂の動きが起こります。

そのきっかけは「お金」でした。

ロッキード社が自社の航空機をANA(全日空)に買ってもらえるように政府高官へ賄賂を渡していたのではないか?

田中角栄の「ロッキード事件」を発端に、世間は金権政治に強い嫌悪感を示しました。

そうした世間の声をみていた自民党の若手議員は、金権政治が横行する自民党をクリーンにすべきだと思い、河野洋平氏(河野太郎氏のパパ)は自民党を離党し「新自由クラブ」を結成しました。

自民党に不満を持つ層をいかに獲得していくか。これが大事なポイントになります。

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中選挙区制

派閥というと悪いイメージがあります。戦前は薩長閥という言葉があり、薩長出身でないと出世できない。現代も政治の派閥はありますし、学歴閥なんてのがある会社もありますよね。

そんな派閥があった背景には中選挙区制という選挙制度にあったと言われています。

中選挙区制では、定数3〜5の枠があるのですが、複数人候補者を出す関係上、同じ政党の候補者同士でも枠を争うことになります。

同じ政党だと政党の公約では差別化できません。

そこで有権者にアピールするために、空港つくったり、新幹線通したり、目に見えやすい成果を出したがるようになります。

インフラはとってもとってもお金がかかる。それでお金が更にかかり金権政治が横行したとも言われています。

派閥によるコントロール

とはいえ、ルールなしに自民党議員同士が争ったら、野党に漁夫の利を得られてしまう恐れもあります。

自民党からしたら、定数3〜5あるとして、一人の圧倒的な候補が票を集めすぎてしまって、他の2〜4の自民党候補に票がいかなくなるのは避けたいわけ。

そこで、うまーく票を調整する必要があり、そのために派閥が持つ固定票を操作してうまく分散するようになりました。

もちろん派閥にもメリットはありますよ。

自分の派閥の議員を当選させるために手助けしたら、総裁選の際に、一票もらえるので、総理大臣への道が近づくからです。

だが、相変わらずカネがかかる派閥政治は世間からは総スカン。

ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件と金権政治絡みのオンパレード。

ですが、今の選挙制度を維持しつづけたらほぼ100%政権交代はありません。

自ら築き上げたこんなに甘い蜜を自ら手放すだろうか。いやしたくない!

そんな自民党の本音もあり、選挙制度改革は全然進みません。

だが、そんなの国民が許さない。選挙では勝ってしまうので、世論で攻撃。

世論の後押しもあり、選挙制度改革はようやく進められます。

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55年体制の終わり

世論は選挙政治改革を進めてほしいが、全然進めようとしない宮澤喜一内閣。羽田派は伝家の宝刀「内閣不信任案」を提出。

ついに山が動きました。自民党内の派閥の一つである羽田派が、小沢一郎など若手議員を引き連れて、集団離党したのです。

自民党内での権力闘争に破れたので、世論の声を味方につけて一発逆転を狙ったのかもしれません。

そして行った選挙では、自民党は単独過半数を取ることができませんでした。

すると考えることは、どこかと連立して過半数を得て政権を維持しよう。

ではどこと手を組むか?

ここで大事なポイントが出てきました。過半数を割るとどこかと手を組む必要が出てくる。そのような状況になってはじめて小さい政党にチャンスが回ってきます。

単独過半数取れてしまうくらい強すぎる与党の状況下では、連立する必要がないので、小さい政党の活躍の場面は少ないのです。

55年体制が滅びて、離合集散の30年はじまる

自民党が単独過半数を楽勝で取れる時代じゃなくなりました。こうしてチャンスが生まれたので新党ブームが起こります。

帝国が滅びると小さな国家で出てくるのは歴史のパターンでもあります。

エジプトやヒッタイトといった巨大な帝国が衰退した結果、ヘブライ人、アラム人、フェニキア人といったセム語系小民族にもチャンスが巡ってきました。

強すぎる一強の存在はあまり好ましいものとは思えません。

ここから先はどういう状況ならば政権交代が可能なのか。歴史からその法則を示していくのが本書の続きとなります。

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さいごに

2012年に民主党政権から与党の地位を奪還した自民党政権。今日に至るまでずっと与党の地位を維持しています。

自民党一強に多数の中小野党。この構図は55年体制の再来なのでしょうか。

本書を読むとそうではないことがわかります。

そして「自民党は嫌いだけど他に選択肢がない」ことは、金権政治に嫌々していた時代の国民と同じ悩みはいまも続いています。

前回は金権政治にNo。だから選挙政治改革を行え!これが国民の声だったかと思います。選挙で自民党単独での過半数を取れなくなったことで山が動きました。

次の選挙も山が動きそうな状況ではありますが、動くかどうか楽しみですね。

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▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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