ヤンキー=不良?
20XX年、国際自然保護連合 (IUCN)はある発表を行った。
専門分野の研究者グループが、調査した結果、日本のヤンキーは絶滅危惧種としてレッドリストに記載されることが決定したのだ。
これはもちろん嘘であるが、一般的なヤンキー(リーゼントやツッパリ、悪羅悪羅系)は街で見かけなくなった。
ヤンキーの発祥は1970年だという説が濃厚で『ビー・バップ・ハイスクール』によって、ヤンキー=不良のイメージが確立した。
- ビー・バップ・ハイスクール
- ろくでなしBLUES
- スケバン刑事
- 湘南暴走族
- ホットロード
- ヤンキー烈風隊
- 今日から俺は!!
- 湘南純愛組!
- ROOKIES
- クローズ
- ドロップ
- スクール☆ウォーズ
ヤンキーを扱った作品を羅列するとこんなにもある。
同じヤンキーでも、これら作品のヤンキーと今のヤンキー(マイルドヤンキー)は全く違う存在だと著者は指摘する。ではマイルドヤンキーとはナニモノなのか?
マイルドヤンキーを簡単に説明するなら、「上京」志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たちのことです
彼らにとっては、生まれ育った地に根ざした同年代の友人たちとの仲間意識と毎日変わらない平穏な生活が最も大事な価値観なのである。
「若者の〇〇離れ」といわれて久しい。昔の若者と違って、今の若者は消費しない。
そう考えられているが、マイルドヤンキーは結構モノを買ってくれる。その消費動向を以下のように分析している。
都心の高感度層・高学歴層の若者が、ケータイやソーシャルメディアによって広がった人間関係をメンテナンスするための社交消費、具体的にはカフェ代や飲み会代といったような頻繁な小さい消費に追われて、「モノ」を買わなくなっている現状に比べ、マイルドヤンキーは車、タバコ、ショッピングモールでの買い物などで消費をしているのです。
新しく人間関係を広げることのないマイルドヤンキーは比較すると人間関係が少ないので、その分、自分の趣味や嗜好品を消費することができるのだ。彼らの存在は消費を促したいメーカーからすると必ず上顧客となる金山といえるだろう。
ほどほどパラダイス
そんなマイルドヤンキーはどのようにして生まれたのか。ポイントは中央に出てこなくても"ほどほどの満足"を地元で得られるようになったからだ。
ゼロ年代、日本全国に大型ショッピングモールが普及したことによって、かつての「何もなかった地方」はほぼ消滅し、その結果、地方の若者たちは、上京しなくてもそこそこの満足度を得られるようになって、地方にこもるようになったのです。
社会学者の阿部真大氏によると、大型ショッピングモールのことを「ほどほどパラダイス」と呼んでいる。
これまで中央に出ないと得られなかったモノは地元で手に入る以上、出る道理はない。
驚くことに電車で数十分で都心に出られる地域に住んでいるマイルドヤンキーも都心にはほとんど出ないという。
パーソナル空間であるクルマ移動に慣れたマイルドヤンキーは、見ず知らずの人のいるソーシャル空間が苦手で嫌いなのだ。満員電車への耐性は一切ない。
後半では今後の消費の主役であるマイルドヤンキーを取り込むための具体的なアイデアやマーケティング方法がぎっしりと詰まっている。
これだけでもマーケティング担当者ならば参考になるはずだ。
本書は2014年に発売されたが、その後のメルカリの大ヒットは本書にも書かれたとおりで見事だった。
さすがは博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。
コロナ後でマイルドヤンキー化するエリート?
2020年初頭、世界を襲っているコロナウイルス。これによって価値観は大きく変化している。
これまで中央でしか得られなかった人との「出会いの価値」は接触を好むウイルスのおかげで得にくくなっている。
都心ではなく郊外にコロナ疎開する人も出ている中、これまで社交費にお金をかけていた、かけねばメンテナンスできなかった層がモノの消費に重きをおくのではないだろうか?
ネットショッピングは賑わいを見せ、おうち時間を快適に過ごすためにはどうしても「モノ」が必要なのだ。