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【書評】『修養 自分を磨く小さな習慣』

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新渡戸稲造について

旧五千円札の人としても日本ではお馴染みで丸メガネのおっちゃんの印象しかないが、実はすごい人である。

5千円札

お札になるからには当たり前だ。

新渡戸稲造は、『武士道』で西欧と比較した日本人の特徴を克明に描き出し、国際連盟事務次長としても活躍した国際人である。

そんな彼が、日々の生活において心がけるべき物事や自分磨きのための具体的な方法を余すことなく語ってくれるのが本書。

修養とは何か

修養とは文字通り、「身を修める」ことである。心を主人とし欲望に惑わされることなく、身体をあるべき場所へ向ける。心身ともに健全に成長させることを修養と呼んだ。

修養には終わりはない。日々の小さな修養を繰り返し続けることで立派な人物になれると新渡戸は主張する。

継続することはなにより難しい

何かやろうと目標を立てることは誰もがやる。だが、年明けに立てた目標を1ヶ月後も守っていられる人はきわめて少ない。

何事であれ、継続することは難しい。過去も未来も関係ない。徳川家康はこう言っている。

人の一生は重荷を負うて遠きに行くが如し

ゲーテもこう表現している。

急がず、休まず

牛歩なれど歩みを止めないことの大切さを過去の偉人もいっていて、辛抱してやり続ければ目標に達するものである。

残念ながら、人の決意ほど辛抱に弱いものもない。誰であれ継続は困難なのだ。しかし、大事をなすには継続がなければならない。

目標を見直してみる

継続のコツとして目標を毎日見直してみることを提唱している。具体例としてベンジャミン・フランクリンを挙げている。アメリカンドリームの代表者フランクリンは毎日継続したいことをリストにして見返していた。

【節制】飽きるほど食うな、酔うまで飲むな
【沈黙】自他に利益の無いことを語るな
【規律】物はすべて場所を決めて置け
【決断】決心したことは必ず実行せよ
【節約】金銭を無駄に浪費するな
【勤勉】時間を空費するな
【誠実】嘘を言って人を陥れるな
【正義】他人の利益を損なうことはするな
【中庸】極端を避けよ、激怒を慎め
【清潔】身体、衣服、住まいを清潔にせよ
【平静】小事、日常茶飯事、または避けがたい出来事に平静を失うな
【純潔】性の交わりはもっぱら健康、ないしは子孫のためにのみ行なえ、度が過ぎると頭脳を鈍らせ、身体を弱める
【謙譲】イエスおよびソクラテスに見習え

毎日、上記をチェックしできていない箇所には黒点をつける。毎日反省することで徳を継続していた。

継続心を鍛える

継続心を修養するために、はじめは、「やさしいが少々いやなこと」をやってみることをすすめる。

たとえば、早起きするとか、食べすぎないとか、毎日日記をつける等、欲望をコントロールしていくとだんだん慣れてくるらしい。

具体例として新渡戸が二十年以上続けているのが「冷水浴」だ。新渡戸は叔父さんの厄介になって勉学に励まなければならなかった。

しかし、人の心は移ろいやすく、勉学に集中できないことも多々あったので、冷水浴をすることで勉学への熱意を思い出していた。

毎朝冷水を浴びるごとに寒いと感じる。この寒さに耐えるのは何のためであるのか。この決心を固めたのは、勉強を忘れぬためではないか。

勉強が続くか、冷水浴が中止されるか。私は冷水浴をもって、自分の勉強の尺度としてやろうと決心したのである。

まとめると、誰にとっても継続は困難であるが、継続心は鍛えられる。そして成功には継続が必須なのだから、頑張って継続心を鍛えていこう。

これが新渡戸からのメッセージである。

体力を温存せよ

その日暮らしの野蛮人と異なり、文明人は貯蓄を行う。文明のはじまりも食物の貯蓄からだった。

日々の修養を支えるものとして4つの貯蓄を挙げている。「金」「知力」「徳」はありきたりだが、面白いのは「体力」を挙げている点にある。

若いうちは体力が有りあまり無限に湧き出る印象があるが、ちゃんと有限である。無茶する人ほど体力があるように思えるが、必ずあとで精算がくるので体力の浪費はできるだけ抑えた方がいい。

新渡戸は「太く短く」生きる友人に対して苦言を呈した。

君らは幸いに元気旺盛であるから、大切にこれを貯蓄して、他日大々的に利用するよう心がけるがよい。

明日をも知らぬ身体であるといって乱用すれば、死にきれもせず、一人前にもなれず、自分も不愉快であり、人にも不愉快の感を与えることになる。

いざというときのために体力は温存しておこう。いざ必要となるタイミングは誰にもわからないのだから。

まとめ

一見説教臭い道徳の話のように思えるが、読書家であり活動家の新渡戸が修養のための具体的な方法を過去の偉人らから引用を駆使して優しくもときには厳しく教えてくれる。

怒られることが少ないのが大人の悲劇だと思うが、そうした意味では、本書を読む度に新渡戸先生が修正してくれる。読めばいつでも新渡戸先生に会える。そんな本である。

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おくでぃ

▶︎ 数千冊の本に埋もれてる積読家 ▶︎ 古今東西の歴史が好き ▶︎ まれに読書会主催 ▶︎ 餃子が好き ▶︎ HONZのレビュアーになるのが夢

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