お久しぶりです!おくでぃです。今回は、夏にあの戦争を振り返るのに最適な新刊が出たのでさっそく紹介します。
あの夏がまたやってくる
夏になると戦争について考えさせられる季節がきたなと思います。生まれる前の話なので関係ないと思う人も多いでしょう。
しかし、現代日本を考える上で、あの戦争を避けて通ることは絶対にできません。
現代日本は敗戦から立ち直り、先進国の仲間入りをしたわけですが、そもそもなぜ戦わなければならなかったのでしょうか。
今年は太平洋戦争開戦から八十年だそうです。恐ろしいことに、あの戦争について、八十年も経つのに、多種多様な意見が未だに出続ける。
事実をみて、正しく理解し、現代に役立てる。そのために、本書では、満州事変からはじまる一五年間の戦争のターニングポイントを辿ります。
豪華すぎる著者陣
昭和史に興味がある人ならばご存知のすごいメンバーが集まってます。サッカーで例えると、メッシが加入したばかりのパリ・サンジェルマンみたいな状態。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の加藤先生に、『昭和史』でお馴染み半藤先生、そして『ナショナリズムの昭和』等、昭和史関連の本を沢山出している保阪先生の鼎談。
面白くないわけがありません。安心して薦められる。
あの戦争は何だったのか
「日本がなぜ戦争したのか、自ら繰り返し説明する努力を十分にしてきたのか」という質問に対し、「十分にしてこなかった」と答えた人が六十五パーセントいるという世論調査もありました。
「あの戦争は何だったのか」。この問いを定義するのはなかなか難しいもの。なぜならば、社会の階層によって戦争体験が異なり、そこから戦争の捉え方が全然違うからです。
本書では太平洋戦争へと至る十年を振り返っていきます。まずは一九三〇年代はどんな時代だったのでしょうか。
ヴェルサイユ・ワシントン体制を打破する時代
第一次世界大戦が終わり、戦争にこりごりした世界は国際協調へ動きました。その結果、一九二〇年代は国際協調の時代となりました。
第一次世界大戦の勝利国として国際連盟の常任理事国にも入った日本は、なかなかにいいポジションを獲得しました。
ところが、一九三〇年代は、国際協調の空気が徐々にしぼんでいくことになります。それも最初に破ったのは日本でした。
そのきっかけは、満州事変です。以降、政治が軍事に隷属していく時代となります。
一九二九年の世界恐慌をきっかけに、経済がダメになりました。政治も腐敗などで信用なりません。経済も政治も機能不全に陥ったときに、第三勢力として軍部が顔を出します。
軍部が表舞台へと駆け上がる手助けをしたのはメディアでした。メディアが国民を煽り、その支持を受けて、どんどん海外へ軍隊を出して占領地を増やしていくことを応援します。
遅れてきた帝国主義国日本が、既に帝国主義を完遂した列強といかに交渉していくかがポイントになります。
「亡国」に導いた6つの分岐点
満州事変から真珠湾攻撃まで、なぜ戦争に至ったのか。その分岐点を6つ挙げ、それぞれについて語っています。
この6つの分岐点は、別の選択肢を取れば、戦争を避けられたかもしれない大事な分かれ道でした。
この分岐点を知ることで、開戦までの原因がいくつか思い浮かぶことになるはずです。
その分岐点を年号で並べるとこうなります。
① 1931 満州事変-1932 満州国建国
② 1931 リットン報告書-1933 国際連盟脱退
③ 1932 五・一五事件-1936 二・二六事件
④ 1937 盧溝橋事件-1938 国家総動員法制定
⑤ 1939 第二次世界大戦勃発-1940 日独伊三国同盟
⑥ 1941 野村・ハル会談-真珠湾攻撃
日本の「生命線」=満州
一九二九年の世界恐慌によって、日本経済も冷え込み、巻き込まれました。経済的困窮から脱却するために、生命線として位置づけられたのが「満州」です。
日韓併合していた日本にとって、恐るべきはソ連。ソ連に対する国防だけでなく、鉄や石炭の豊富な満州は生き残る上で、大事な地域でした。
日露戦争の結果、日本は満州の鉄道と地域の租借権を入手しました。しかしそれは途方も無い犠牲の上に成り立っていました。
「二十億の資材と二十万の生霊」
こんなスローガンがあります。満州の権益を得るために、二十億の戦費と二十万人の犠牲があったのだ。と。
こんなにコストがかかったので、簡単に手放すことなどできません。なぜならば、日露戦争を戦えたのも国民の協力があったからで、説明責任が生じるからです。
国民と協力して手に入れた満州権益は何しても死守しなければならない。これこそが戦争を避けられなかった要因の一つと思います。
ここから、太平洋戦争開戦までは、この満州権益を列強にどう認めてもらうか。また満州権益の拡大を目指す軍部と経済界など、さまざまな要因が絡んで複雑化していきます。
その経緯がわかりやすく書かれているので、夏に戦争を振り返りたいと思っている人にはぜひ読んでみてほしい一冊です。
まとめ
西ドイツのヴァイツゼッカー大統領はこのような言葉を残しています。
「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になります」
現在と未来のヒントは過去にあります。そのためには、過去と対話する必要があり、本は最適なメディアのひとつです。
あの戦争とは何だったのか。なぜ戦争へと突き進んだのか。当事国の子孫として、自分のご先祖様の関わったあの時代を振り返るのに、最適な一冊だと思います。
こんなにすごい鼎談は他にないですよ。
ではでは!
おすすめ書籍
↑今回、紹介した本書。
↑加藤先生の代表作。タイトルのとおり、戦争に至るまでの経緯を細かく描写してくれている。
↑岩波のおすすめ通史。まさに太平洋戦争に至る前の満州事変から日中戦争までの詳細がわかる本。
↑説明不要な一冊。昭和史に関心もったら、まずはこれを読むことがスタートラインに立つことだと思います。
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