お久しぶりです!おくでぃです。今回は世界で最も愛されたテーマ「受胎告知」についてご紹介します!
おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。
それはわずか数分の出来事でした。
神から遣わされた天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に住んでいたマリアという乙女を突然訪問しました。
そしていきなりこう言ったのです。
おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。
???
マリアだけでなく誰もが戸惑うことでしょう。
一体何のことだろうか。そしてこの人は誰なのだろうか。
そんなマリアの様子をみて、ガブリエルはこう告げます。
マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を生むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。
マリアはこう返します。
どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。
天使は答えます。
聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。
そこでマリアは悟り言った。
わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。
その言葉をきいてから天使は去っていきました。
めでたしめでたし。
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詳細はなにもわかっていない
このエピソードは福音書にわずか数行の記述のみしかありません。
マリアがガブリエルといつ、どこで出会い、そのときにどのような服を着ていたのか等なにもわかっていないのです。
曖昧な部分が多々ある。
それがむしろ数多くの画家の想像力を掻き立てました。
天使とマリアの位置であったり、ポーズや小道具など描かれる時代によって変化していきました。
本書は、ゴシック以降、バロックあたりまで頻繁に描かれた受胎告知というテーマだけに沿って、
その変遷をみていく一冊となっています。
数多くの巨匠たちのカラー絵も見れるのでとっても面白いです。
布教に人肌脱ぐマリア
ではなぜ多くの人が受胎告知をテーマに絵を描いたのでしょうか。
それにはキリスト教の布教活動が関連しています。
もともとキリスト教では、教えを広めるために、絵画や彫刻を大切にしていました。
当時は誰もが文字を読めるわけではありません。
現代も文字よりも画像、動画のほうがスッと頭に入ってくるものは多いですよね。
そこで聖人や聖書のエピソードを絵画にしてキリスト教を布教していたわけです。
そんな中、主人公イエスと並んで大人気だったのが聖母マリアでした。
マリアを代表するエピソードのひとつが受胎告知なわけですね。
それにしても受胎告知という絵はヨーロッパでは頻繁にみられるそうです。
日常にありふれているほど溶け込んでいるテーマ。
それが受胎告知なのです。
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なぜマリアは人気なのか?
それにしてもマリアは人気過ぎます。マリアを冠した記念日があるほど、神の子にも引けを取らない人気はどこから来るのでしょうか。
その人気は親しみやすさから来ると言われています。
イエスは人間ではありますが、神の子でもあります。神と人間どちらに近いかというと、奇跡起こすし神寄りな気がします。
どう考えても恐れ多い。
そこで、人々は人間である故にイエスよりも親しみやすい聖母マリアに祈りを捧げることで、天上の神へとりなしてもらおうと考えました。
マリアは「とりなしの聖母」とも呼ばれる事になったのです。
ビジネスチャンスとしての受胎告知
キリスト教全盛期の中世には、教会がもっとも多い注文主として、画家にテーマを決めて描かせていました。
教会からすると、民衆に親しみやすく愛されているマリアはテーマとして安牌なのでよく選ばれていました。
特に受胎告知はビッグテーマとして、描かれた絵は教会内でも目の惹く良い場所に飾られたので画家にとっても大変な名誉だったのです。
画家からすると、よく注文入るテーマですので、みてももらえますし、評判がよければ次の注文にも繋がるため頑張って制作に取り組みました。
時代を経て変化していく受胎告知の絵
それから本書では、受胎告知内で描かれる小道具や場所についての解説や時代とともにどう変化していったのかをみていきます。
必ずといっていいほどマリアと一緒に出てくる白百合がありますが、福音書には百合の記述は一言もありません。
受胎告知についての乏しい記述をもとに、画家が想像力でどう補い、どう違いを出すのかは腕の見せどころでした。
そんな画家たちの苦労も見ることができます。