等身大のゴッホ像
フィンセント・ファン・ゴッホほど生涯を知られた画家はいないだろう。
自分で耳を切り落としたり、ピストルで自殺したり、とんでもないエピソードとともに狂人ゴッホとしてのイメージが膨らんでいる。
だが、実際にゴッホも一人の人間である。
自分の才能を信じたり疑ったりしながらも描き続けた「ありふれた」芸術家の一人であった。
そんな等身大のゴッホを描いたのが本書だ。
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ゴッホの恩人夫婦
本書を描いたのは弟テオの奥さんであるヨー。弟のテオがゴッホを支えた大切な存在だったことはよく知られているだろう。
だが、テオは兄の跡を追うように半年後に亡くなってしまう。
夫と義理の兄の死後、残された大量の書簡や絵画を管理したのがヨーだった。
彼女は気前よくいろんな展覧会に義兄の絵を貸し出したり、セールスすることでゴッホを世間に知らしめた。
テオとヨー夫婦の努力がなければ世間はゴッホを見つけることは出来なかったかもしれないのだ。
そんなヨーが時系列にそって、義兄ゴッホの生涯を描いたのが本書である。
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ゴッホとの生活に悩む弟テオ
ゴッホの伝記では、弟テオは聖人君子のように良い人で描かれる。
狂人の兄の才能を誰よりも信じて、生活もテオが支えてあげた。
兄に画家になったら?と勧めたのも彼であった。
そんなテオだが、パリでゴッホと共同生活をする時期があり、妹への手紙でボソッと本音を漏らしている。
「いまの家での暮らしにはほとほと耐えられないよ。もうだれも遊びに来ることはない。それはそうだろう。最後にはいつも口喧嘩が待っているし、しかもフィンセントが部屋を散らかすから、ひとが遊びに来たがるにはほど遠い状態だ。フィンセントがここを出て、ひとり暮らしをしてくれたらいいんだけどな。」
多くの書簡を記載してくれているのでテオの本音がわかるのは本書の魅力の一つである。
狂人ゴッホと同じ屋根の下で暮らすしんどさに弱音を吐くテオだったが、兄の才能は信じていて、支え続けることを決意する。
こんなに優しい弟に恵まれて羨ましいと思う。
また、本書ではゴッホの絵も都度差し込まれていて、絵を見る楽しさも味わせてくれる。
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さいごに
ゴッホの身近な人物の書簡がベースになっている本書は、非常に貴重な一冊だと思う。
サイズもポケットに入る大きさで、非常に読みやすいのも嬉しい。
ゴッホファンならば必見といえる素晴らしい一冊だった。