世界一有名な作家
ウィリアム・シェークスピアは世界でもっとも知られた文学者であろう。
生まれ故郷のイギリスのみならず、極東の島国を含む全世界で彼の作品は読み継がれている。
そんなウィリアム・シェークスピアは四百年以上も前の劇作家だ。日本でたとえると徳川家康と同じ時代の人物。
古い作品だが未だに世界中の人々を虜にするのは何故だろうか。
その秘密を、シェークスピアが生きた時代や人生を振り返り、明らかにするのが本書だ。
著者の大叔父があの人物!
著者は『ハムレットは太っていた!』でサントリー学芸賞受賞したシェークスピアを専門に研究している河合祥一郎氏
シェークスピアはいろんな人が訳しているが、書店で比べて一番しっくりきたので私は河合氏の角川版シェークスピアを読んでいる。
またびっくりしたのだが、祖母の大叔父がシェイクスピア戯曲を初めて全訳した坪内逍遥らしい。
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シェークスピアの時代をたどる
第一章〜三章まではシェークスピアの人物像を知るための伝記ような形式をとっている。
チューダー朝とスチュアート朝のはざまに生きた彼の時代背景を知らないと、作品の意味もわからない。
二〇歳の若さで三児のパパ。そして無職!
そんなシェークスピアの人生をたどるだけでも面白い本になっている。
第四章では、なぜシェークスピアの劇がこんなに魅力なのか。いわゆる「シェークスピア・マジック」について解説してくれる。
第五章〜六章では、シェークスピアの代名詞、喜劇と悲劇について理解できる。
最後の締めくくりは、シェークスピアの作品に込められた哲学を追う。
人生のある場面でシェークスピアの名言は響く。
誰もが人生という舞台でさまざまな役を演じている。
「万の心を持つ作家」と呼ばれたシェークスピアは、とにかく人の心象を描くのがうまい。
人間をもっとも人間たらしめる感情を熟知していたからこそ時をこえて人々の注目を集めるのだろう。
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悲劇の本質=ヒューブリス
シェークスピアといえば喜劇もあるが、やはり悲劇だろう。
シェークスピア四大悲劇と言われる『リア王』『ハムレット』『オセロー』『マクベス』はどれも超有名作品。
どの悲劇にも共通しているのが、主人公がある選択をし、自分の判断にそぐわないものを否定するところから悲劇は始まる。
シェークスピアに多大なる影響を与えたギリシア悲劇の本質はヒューブリスにあるという。
ヒューブリス=「神に成り代わって運命を定めようという傲慢さ」
オイディプス王も運命を変えようと選択し行動した結果、最悪の結果を招いている。
『ハムレット』を概観してみよう。
ハムレットは叔父を父殺しの犯人と断定し、復讐しようとするもハムレットが葛藤する様が見どころなのだが、現代からすると、とっとと復讐してしまえばいいじゃんと思う。
だが、キリスト教ではそう簡単にはいかない事情がある。
新約聖書では「復讐は人間がしてはいけない。復讐するのは神の仕事」と書かれている。これを知らないとハムレットの苦悩がわからない。
ハムレットにおけるヒューブリスは、神に代わって復讐しようとすることなのだ。
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さいごに
本書を読むとシェークスピアの作品をとにかく読んでみたくなる!
私も本書を読んですぐに『オセロー』『リア王』と立て続けに読んでしまった。
難しい印象のあるシェークスピアだが、本書を読むとその魅力的な世界に飛び込んでみたくなるだろう。
シェークスピアへのパスポートとも言えるべき一冊でおすすめだ。